共用品九州発行のメルマガに連載中「共用色彩コラム」に2005年3月掲載
【 高齢視を知ろう! 】
人は約750万色から1000万色もの色の違いを見分けられると言われています。言葉で言える色の名前はせいぜい40色くらいでも実際に見ている色は素材の凹凸や光の当たり具合で微妙な違いを見せています。
そう思って回りを見回すと、たぶん今いる部屋の中でも数千から1万色ぐらいの色が存在するのですよ。
ところが歳を重ねる内に、この見分けられる色の数は減ってきます。
そのため、素材感やモノの形状の違いがわかりにくくなるようです。
洗濯物に残った汚れや、洗ったお茶碗にご飯粒がこびりついていたりしても気がつかなかったり。そんなところにも影響してきます。
高齢視になると、実際色の見え方はどのようなっているのでしょうか。
高齢視を体験する高齢視メガネを使ってみるとこのように見えます。
ところで、実際高齢の方にどのように見えてますか?と確かめるのはとても難しいことです。
言葉で伝えても色紙で確認してもお互い見ている色が同じではないのですから。
ただ最近の研究でわかってきたのは、高齢視メガネで見るほど高齢者の方は違いを感じていないということです。
人間には環境に適合する、つまり慣れるという順応性が備わっているからでしょう。
想像してみましょう。
茶色いサングラスをかけた時、はじめは周りのものすべてが茶色っぽく見えます。でもしばらくすると慣れてきて、茶色を感じなくなります。赤い花はいつもの赤い花に青い花瓶は青に見えています。
これは色順応と色覚恒常性。人間に備わった便利な機能ですね。
さて、それならば特別に高齢者の色の見え方に配慮する必要はないのでしょうか。
いいえ、そうではありません。
見る環境(特に暗い所)や、見る色の組み合わせによっては色の違いがわかりにくくなります。むしろ安全性や使う時の心地よさを考えれば高齢者の視覚特性にはもっと配慮する必要があると思います。
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